「もっとボールを前で離すんだよ。」と指導されたことがある選手は多いと思います。

私もそのような指導をされたことがあり、ボールを前で離そうと自分なりに腕をとにかく前で振ってみたのですが、それは完全に間違ったやり方だったようで肩に違和感を覚えたためすぐに前で離す意識をやめてしまった。ということもありました。

このような指導を受けて、理解できなかった選手はたくさんいるのではないかと思います。

また、指導者の方でもこの選手はリリースが早いなと思った時に具体的にどのようにしたらリリースが前になるように伝えられるのか悩むことも多いと思います。

そのような悩みを持つ方はぜひ最後まで読んでいただきたいです。

なぜボールを前で離すのか?

なぜボールを前で離すのか?
大きく分けて3つ理由があります。

一つずつ見ていきましょう。

①コントロールが安定する
こちらの記事にも書いたのですが、前で離すことによりコントロールが安定します。

投手には欠かせないコントロールの精度を上げるために大事な【6つ】のポイント!!!

右ピッチャーの場合ボールを早く離すと、体の横で離れるため右バッターボックスの前で離すことになりますが、しっかりと体を回転させて前で離すことによってホームベースに向かって離すことができます。

そのため比較的コントロールが安定します。

コントロールについて詳しく知りたい方は上のブログも合わせてお読みください!

②球速が出やすくなる

これからこの記事で説明していきますが、前でボールを離せるような投げ方をしているということは、リリースするところで腕が十分に加速している良い投げ方になっているため球速や回転数が出やすいのです。

ここで大事なことは、前で離そうとするのではなく、結果的に前でリリースできる投げ方にしていくということです。

③打者を打ち取りやすくなる

人によっては投げ方で20cm程度リリースポイントにズレが生じることもあると言われています。

つまり、20cm分打者がボールを見ることができる時間が長くなってしまいます。

逆に、前で離すことにより、打者がボールを見る時間が短くなるため、打者を打ち取れる可能性が高くなるということになります。

前で離すということに関してこんな記事も見つけました。

ノーラン・ライアンを育てたピッチングコーチから「リリースポイントがバッター寄りになればなるほど打たれない」と聞いたことがある。体感速度で言うと、10センチ違うと5キロぐらい違うらしい。

<参照>前田健太が意識したエクステンション 結果を大きく左右する小さな差 NHK「ワールドスポーツMLB」(最終閲覧日2021.09.03)
https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201803280014-spnavi

特に球速がなかなか出ない投手はどれだけ前で離せるかによって、スピードを感じさせるボールを投げることができるかもしれません

エクステンションとは

「前で離す」ということに関して、知っておきたい言葉があります。

それは「エクステンション」という言葉です。

筑波大学体育会系准教授 川村卓先生は本の中で次のように「エクステンション」の説明をしています。

これはリリース時のプレートからリリース位置までの距離を測定した数値を意味します。

メジャーリーガーの平均はピッチャーの身長の105%であり、180cmのピッチャーであればエクステンションは189cmとなります。

普段からエクステンション値を測定しておけば、その日の調子を見るバロメーターにできます。

・川村卓、井脇毅:打者を打ち取るストレートの秘密、辰巳出版株式会社、2021年5月1日 66頁

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201803280014-spnavi

そして、こちらの記事には前田健太投手がシーズン途中からエクステンションを意識し、エクステンションが長くなったことで防御率の数値がかなり良くなったことも書かれていました。

「前で離す」ことはメジャーリーグの打者を打ち取ることにおいても効果があるということがわかるデータです。

ただ、エクステンションのデータはトラックマンなどの精密で高価な機械でしか測定ができないため、一般の選手が自分のエクステンションの数値を把握するということはなかなか難しいことです。

正しく下半身を使う

体重移動の際に、横にぶれたり、体重移動がうまくできずに体重が後ろに残るとリリースポイントは前になりません

投げたい方向に真っ直ぐ体重移動をすること、リリース時に重心を十分に移動させきることができればリリースポイントも自然に前になります

正しい下半身の使い方はこちらのブログに掲載してあるので、ぜひ合わせてご活用ください。

投球における【正しい】下半身の使い方

骨盤を回転させる

骨盤を正面に向けて手をまっすぐ伸ばします。

骨盤正面にを向けたままと骨盤を回転させたときとではどちらのほうが腕が前に伸びますか?

 

骨盤を横に回転させたほうが手は前に伸びると思います。

このことから、リリースの際はしっかりと骨盤を回転させてリリースしたほうがより前でボールを離すことができるということがわかると思います。

回転の支点を作る

骨盤を回転させる時にはステップ脚の腰を引いて回転させるのではなく、ステップ脚の腰を支点にして軸足側の腰が前に来るように回転させることが重要です。

ステップ脚の腰を引いて回転させてしまうと、支点も後ろに下がってしまうのでリリースも後ろになってしまいます。

また、ステップ脚の腰を引くことで力を逃してしまう動きになり、上半身に力を伝えることができません

ステップ脚側の腰を引いて腰の回転をするのは絶対にやめましょう。

上の図は赤い丸を支点として、青い線を腰が移動する距離としています。

〈体の中心が支点で回転している〉場合は前への移動はできずにその場で回るだけになります。

〈ステップ脚側の腰が支点で回転できている〉場合は、〈体の中心が支点で回転している〉場合の直径分を半径分として移動しているので倍くらい長く移動することができます。

その分エクステンションが長くなり、ボールを加速させる時間も長くなります。

体幹の前屈

体幹を前屈させるためには、並進運動時に体をまっすぐ保っておくことが大切です。

この時点ですでに体が前へ前屈し、上体が突っ込んでしまっているとその後体を回転させることができなくなってしまうので、腕で投げるしかなくなり、いわゆる手投げになってしまいます。

そうなるとボールに力が伝わらず、肩肘にも負担がかかってしまいます

体重移動後に、ステップ脚の腰を支点に回転し、さらに腰の回転と体幹の前屈の回転に少しの時差を生むことで(捻転差)、体が捻れた状態から元に戻そうとする力も生まれるのでより強いボールを投げることができます。

体が突っ立った状態としっかり前屈できている状態とでは前屈できている方が前でリリースすることができます

そして、前屈している方が強いボールを投げられそうに見えますね。

トップを作って腕をしならせる

トップを作った後、しっかりと体幹を回転させていきます。

このときに、肘が肩のラインまで上がっていること、前腕の力が抜けていることでしっかりと胸を張ることができて、腕のしなりも出てボールの加速を生み出します

元中日のエースだった吉見一起さんも子どもたちに指導をする際に、弓矢の弦のようにしっかりと胸を張って投げることが大切だと伝えていました。

その時の指導の様子はこちら↓

リリースする時の位置が体の前だとすると、このしなりの動きは後ろ側での動きになります。

しっかりと後ろを作ることで、前も大きくなりリリースポイントも前になります。

腕のしなりについてはこちらのブログに掲載してあるので、ぜひ合わせてご活用ください。

【球速UP基礎】少年野球で出来る「腕がしなる」ボールの握り方と手首の使い方

最後に

リリースポイントを前にするためにはどうすればよいのかということについて書いていきました。

大事なのは、腕だけでリリースポイントを前にするのではなく体全体を使ってリリースを前にすることです。

このブログで書いたことを意識すれば、フォーム自体が良くなることは間違いないです。

ぜひ、日頃のキャッチボールから意識して取り組んでみてください。

〈参考文献〉
・川村卓『野球の科学』東京:SBビジュアル新書、2021年
・川村卓、井脇毅:打者を打ち取るストレートの秘密、辰巳出版株式会社、2021年5月1日