キャッチボールは昔から「野球の基本」と言われますが

その中でもボールを正しく握ることは、「基本中の基本」になります。

しかし、ボールを「正しく握らずに投げている選手」はとても多いと感じています。
10年くらい前の某文献データになりますが、「ボールの正しい握り方を知らない選手が多い!」ということでした。

また、これまで約1年間ほどで100チーム以上でキレダスの体験会をさせていただいたのですが、しっかりボールを握れていない選手」想像していたよりも多いと実感しました。

悪いボールの握り方をする選手」を1人でも多く減らすことができれば、投球フォームが良くな可能性にも繋がります。

また「ボールの握り」センスが無いと感じている選手でも、今すぐに意識して取り組み成果を実感できる可能性が高いです!

今回の記事では、正しいボールの握りの知識を改めて確認してもらい、「投球・送球の改善」に繋げていただきたいと思います。

今回の内容⤵

ストレートの正しい握り方の確認

基本的に言われているのは、アーチ部の縫い目に人差し指と中指(*特に中指をかけることは重要です)をかけてその2本の指の間は、指1本くらい隙間をつくることが目安とされていることが一般的なところだと思います。

親指は、その隙間の真下の位置に接地させることが理想とされ、ボールを支える3つの指の関係性は、親指を頂点として二等辺三角形を描くことができます。
深く握り過ぎてしまうと、無駄な力が入りやすくなったり、指にボールがかかり過ぎてしまうので、適度な間隔になるように親指の位置を調整します。

親指を動かすときの注意点として、先程説明した”真下の位置”から左右にズレないように動かしてボールとの空間を適度に調整します。

プロ野球選手のストレートの握り

いろんなプロ野球選手のストレートの握りを見ているときに気がついたことですが

「同じストレート」の握りでも、全く同じではありません!

選手により違いが見られて、そこに個性と工夫を感じることができました。

基本的にはストレートのスピードに拘りが強い投手人差し指と中指の隙間を狭い傾向があると言われています。

元阪神タイガース・藤川球児投手火の球ストレートの握りが、ご本人のYouTubeチャンネルで公開されていましたが、2本の指をぴったりとくっつけて握っていたと証言されています。

前人未到の400勝投手、金田正一投手も同じように握っている写真を見たことがります。

しかし、現ヤクルトスワローズの石川雅規投手技巧派の投手と言われていますが、藤川投手と同様に2本の指をほぼくっつけていました。
㈱ベースボールマガジン社発行:週刊プロ野球データファイル009号

私が見た全てのプロ野球投手の握りに共通していたことは、人差し指と中指の間隔は選手により個人差が見られましたが、親指の位置は「必ず人差し指と中指の真下に接地」されていました。

一般的な考え方も参考にしたいところですが、人により体格や理想とするイメージも違います。体格も違えば当然ボールを握る感覚もまったく同じ人はいません。

ボールの握り方も、「自分に合った握り方」「ボールにしっかり力が伝わる握り方」を各自見つけてほしいと思いますが”親指の位置”には十分注意する必要がありそうです。

【実験】「握り方」が手首・肘・肩に影響していることを確認

投球時に腕を振る動作を数回繰り返してもらいます。
よく言われる肘抜きをしてしまうと、画像1のフォームでもお伝えしたように、両肩を結ぶ直線上の位置よりも肘が前に追い越す状態となります。

今回の実験でもならないように注意が必要です。

腕の振る強さは可能な限り変えずに、ボールの握り方を色々変えていきます。

ストレートの握り方で、人差し指・中指・親指の位置を少しだけずらしたりして
同じストレートでもいろいろな握り方をして、腕を数回振ってみてください。

ボールの握り方により、腕に感じる負荷や場所が違うことを感じることができると思います。

ボールと親指の位置

人差し指と中指の中心位置から親指をズラすと「リストが使いやすくなる」感覚がより強く感じれたと思います。
また、親指の位置は中心位置にきているものの、「親指のお腹」「親指の側面」でボールを握るという少しの差でも、その感覚の違いを感じることができるかと思います。

更に意図的に手首をバシバシ使った「リストスロー」の動作を繰り返してみてください。

*リストスローについての詳細は過去記事をご参照ください
https://backstage-baseball.com/syounenyakyu_nagekata_shidou_dame/

実験の結果

個人差はあったかと思いますが、ボールの握り方が違うだけで腕の振られる感覚が違うということが実感できたかと思います。

ボールを握る親指が、
・人指し指の中心位置からズレる
・親指のお腹でボールを支える
ことで、「リストスロー」を自然に引き出してしまう状態になってしまいます…

そして、更にリストを必要以上に使うことで前腕部の緊張をかなり強く感じたかと思います。

また、ボールを強く握り過ぎる不要な動作にも繋がりやすくなります。

直接指導させてもらっている小・中学生の選手たちにも、ご紹介した実験を実戦してもらい

・投げる瞬間手首を使う「リストスロー」はしないこと
・同じストレートの握り方が少し違うだけでも腕への影響が変わること

を実感してもらい「ボールの握り方」の重要性を伝えています。

実際にボールを投げると

腕が振られるスピードは速くなるので、その負荷も高くなります。

実際の投球時にはより「腕のしなり」を生み出しにくい原因になってしまう感覚がイメージできると思います。(参考文献:桜井伸二「投げる科学」大修館書店)

図の「手」の赤ラインの指標が後半急激に伸びていることが分かります。
「肩」「肘」の動きが減速していき静止していくことに対して、手は加速していることが分かります。

よく指摘される「手投げ」になっている人ほど勘違いをしてしまいそうなところですが…

腕の振られるスピードが高まるほど、直感的に腕の力が必要になると思いがちですが、それは違います。

「肘」に連動している「手指・手首」の筋肉

手指を動かす筋肉を知ることで、手指・手首・肘まで関節が連動していることへの理解がより深くなります。

ボールの握り加減や手首の使い方が少し違うだけで、ボールへの力の伝わり方が変わるように、手指・手首・肘関節への力の伝わり方も変わります。

肩・肘の怪我予防やトレーニングのレベルアップにも役立つことなので、必ず理解を深めていただきたいです

「拇指内転筋」(ぼしないてんきんきん)

のひらと指の間をまたいでついています。親指を手のひらに近づけるときに使います。
ボールを握るときに必ず動かす筋肉になります。

親指の位置がボールの中心より外側に外れている人や、親指のお腹で支えている人は、この筋肉が緊張しやすくなります。また、手首の動作にも影響が出るので、「リストスロー」で手首を無駄に使ったり、肘に力みが入りやすくなります。

回内・回外の動作も動きもスムーズにできなくなり、肩の力で無理をして肘を動かす動作が起こるため、肩への負担も高めてしまいます。

「尺側手根屈筋」(しゃくそくしゅこんくっきん)

手関節の掌屈、尺屈の動きを大きく、力強く動かしている筋肉になります。

「拇指内転筋」を使ってしっかりボールを握れていない状態になると、この「尺側手根屈筋」が動きやすくなります。

投球動作への影響は「手首をしっかり立てて」ボールを投げることが難しくなります。

この「尺側手根屈筋」酷使してしまうことで、野球肘でも特に多い「肘の内側の痛み」発症しやすくなります。

「浅指屈筋」(せんしくっきん

腕部分から手首をまたぎ手のひら側の指についています。

この筋肉の末端部は手首をまたぎ、親指以外の4本の指についています。
この筋肉により、指を曲げ、手首を手のひら側に曲げることができます。

「浅指屈筋」の肘に近い部分をみてください。
肘の関節をまたぎ上腕の骨の末端についています。「尺側手根屈筋」と同じく「浅指屈筋」は、手指・手首・肘の3つの関節運動に関わっている筋肉になり投球・送球動作において重要になります。

掲載図では分かりにくいところだと思いますが、「浅指屈筋」の上に「尺側手根屈筋」のっているイメージになります。

「総指伸筋」(そうしくっきん)

前腕の手の甲側についています。
この筋肉の末端部分は、手をまたぎ、親指以外の4本の指についています。

手首を反らす・伸ばすときに働きます。
そして、この筋肉も肘の関節もまたいで上腕骨の末端についています。

つまり、手指・手首・肘の関節連動に関わっている筋肉になります。

これは短い筋肉が働くだけでなく、「総指伸筋」や「浅指屈筋」などの長くて大きい筋肉も働き、手首や肘関節を固めてしまうからです。

まとめ

手指や手首など末端の手の筋肉を緊張させてしまうことで、連携している関節にも必ず影響が及びます。

ボールの握り加減や、手首の使い方にも確実に影響してきます。

このようなことからも、ボールを正しく握ることが、手首を正しく動作させることは、怪我の予防にも繋がります。

伝達される人が知識を深めることにより、受け取る側の選手の「些細な何故?」にいつでも反応できます。

いちいち相手から質問されないものですが、経験の少ない少年野球をしている子どもたちでも、指導されたことに対して疑問を持っていることが頻繁にあると思うことがよくあります。

その理由を伝えてあげることで、指導を受け取る側の理解はより伝わりやすくなると実感しています。

今回の記事を少しでも現場で役立てていただきたいと思います。

各解剖図
出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021