動画撮影したピッチングフォームやバッティングフォームを選手たちと確認したときに「イメージしていた理想の動作と現実の動作のギャップ」があまりにも違っていたことに選手が驚いたという経験はありませんか?

 その「ギャップ」「理想」に近づかせてあげることができれば、技術アップしていき「良い結果」に繋がっていくことは指導者も選手たちも理解していると思います。

そして、技術的なアドバイスをしている指導者はその「ギャップ」を縮めてあげることが重要な役割となります。

今回の記事ではその「理想と現実のフォームのギャップ」上手く縮めることができない要因を明らかにして、選手たちの「ギャップ」を少しでも縮められることが出来るキッカケになれると思い記事にしました。

指導者としての信頼もより厚くなると思います。
是非最後まで御覧ください。

指導している選手たちの理想のフォームは?

指導しているお子様や選手が、理想としているフォームはどんなフォームでしょうか?

現役プロ野球選手でしょうか?
それともチームメイトの先輩でしょうか?

小・中学生なら「特にいない」という選手がいても驚くことはありません。

それは選手により違うはずです。
また、それが同じ選手であっても、着眼しているポイントや感じ方が同じであるとは限りません。

選手が何か「理想としているフォーム」がなければ、「理想と現実の差を縮める練習方法や目的」がボヤけてしまいます。

まずは、選手が理想とするプロ野球選手やスイングがどんなものなのか、指導者はなるべく明確に把握することが必須です。

選手の理想が分からない…

理想とするフォームとして参考にしやすいのが、圧倒的な結果を残しているプロ野球選手になると思います。

現代はメジャーリーガーや日本のプロ野球選手など、トップレベルの選手たちの動画が誰でも手軽に見ることができる時代です!

選手が憧れる選手や、同じようなプレースタイルの選手を数名ピックアップして、一緒に動画を見てあげたり、選手がその気になれば研究することを推奨します。

選手が乗り気では無いケースも考えられるので、その時は選手にいつでも伝えられるように動画を保存したりして見せてあげられる準備をしておきましょう。

個性もありますがトッププレイヤーに共通点はレベルが上がるほど「基本」がしっかりできています。

理想とする選手が途中で変わっても、大きく道が逸れてしまう心配はありません。

もちろん、プロ野球選手に限らず、チームメイトや同じ年代のレベルの高い選手をモデルにすることも問題ありません。

よほどセンスがある選手はレベルアップしていきますが、理想・目標とするモデル選手を持たせてあげることで「理想と現実のフォームも比較・縮減」に取り組みやすく、成果も感じやすくなるのでおすすめです。

目標とする選手、フォームなどを出来るだけ細かく共有しておくことができれば、ステップアップするスピードも驚くほどよくなる可能性も高くなります。

選手のフォームをよく観察する

指導する立場になると特に重要なフェーズになります。

前章の理想のフォームは精度はさておき、決めやすいところです。
小中学生であれば、漠然と「カッコいいプロ野球選手」でも充分です。

Youtubeなどの動画アプリでたくさんプロ野球選手やメジャーリーガーのピッチングフォームやバッティングフォームを見ている指導者、選手はたくさんいると思います。

逆に指導している選手たちのピッチング・バッティングフォームの動画をどれくらい見てあげているでしょうか?

手軽に動画撮影が出来る時代ですが、機器が普及している割にはあまり自分自身のフォームを撮影をして理解している人はまだ多くない印象があります。

同じ選手のピッチングフォームやバッティングフォームを撮影しても、撮影する方向や角度が少し違うだけでも、頭に入ってくる自分のフォームのイメージが違います。

また、動作のなかで、力の入れるタイミングや加減などは動画でも伝わらないので、撮影した動画を選手と確認しながら細かく会話でチェックしていく作業が必要となります。

選手のフォームをスマホカメラなどで撮影して「じっくり観察」することでまずは最高のフォームに導いてあげることができる準備が整います。

選手も同じくらい自分自身のフォームに深く興味を持ってほしいところですが、押し付けになってもよくありません。

しっかりと観察していれば「フォームを見るポイント」や「選手にかける言葉」も一味も二味も違うものになるので、「〇〇コーチは僕のことをしっかり見てくれているな」と自然になる可能性も高くなります。

選手に本気の改善を望むなら!
選手のフォームをチームの誰よりも理解するつもりで接していく必要があります。

理想のフォームvs現実のフォーム

基本的にはまず「現実のフォーム」=「選手のフォーム」をよく知った上で「理想のフォーム」を参考にすることです。

よく理解した上でアドバイスをする

よく理解した上で動画を見たり書籍を読んだりする

同じフォームでも、指導の視点や深さにかなりの差がつきます。

「選手のフォーム」があまり理解できていないのに「理想のフォーム」とのギャップを縮めていくことは難しくなります。

特に指導者がこの部分を疎かにしてしまうと、選手たちを成功に導く可能性を狭くしているようなものになります。

後ほど詳しく説明していますが、イナーシャル・リダクションのアプローチもポイントがズレてしまう可能性が高くなります.

選手のフォームをよく理解しておくことで、いろいろな知識や動画を見たとき、また指導したときの反応もかなり良くなります。

プロ野球選手などの「理想のフォーム」はよく見ているけど「自分自身のフォーム」はあまり見れていない選手はその比率を逆転させて研究するようにしてあげてください。

理想と現実のフォームのギャップに驚いていた選手は、しっかりと現実のフォームを知ることで驚くこともなくなるでしょう。

動画を見慣れていない指導者は選手のフォームを見ても、何が良くて悪いかもなかなか気が付くことができなかったりしますが、最初は見慣れるまで根気よく「選手の動画を何度も見て観察」することが大切です。

フォームは「慣性力」に支配されている

ピッチング・バッティングフォームを指導していく上で知っておいてほしいことが「イナーシャル・ギャップ」です。

ピッチングフォームやバッティングフォームで起こる「理想と現実のフォームのギャップ」

その正体は「慣性力」による影響が大きく、バッティング・ピッチングフォームは「慣性力に支配されている」と言えます。

ピッチング動作、スイング動作は、「加減速」「多軸同時の回転運動」などの複雑な動きが一瞬にして行われます。

スイングの動作では大きく「縦の動作」「横の動作」「回転動作」が同時に働き、一定の速度で同じ動きが続くことがありません。

一瞬で行われるスイング動作では「速度」や「方向」が変化したり、スイング動作が停止するとき、それまでの状態を続けようとすると大きな力の影響を受けて様々な方向にバットや身体が引っ張られます。

これを『慣性力』と言います。

『慣性力』の影響で、自分の感覚でバットを地面に対して水平にスイングしても、実際には身体の前後左右の傾きや、腕の距離、バットの重さなどの影響によりバットの軌道がアップダウンしてしまったりするなど、「イメージした動きと、実際の動きとのギャップ」が必ず生じます。

スイング動作では、慣性力が働くとバットがグーンと加速していきます。

その途中で何らかの動作を意図的に変える、止めるなどの動作を入れても、慣性力を邪魔することはなかなか出来ません。

理想の動作イメージを大げさに意識しても、そこまでフォームに変化が見られなかったりするのは『慣性力』が働いているからです。

引用元:ベースボール・マガジン社「バッティングの極意 うねり打法」:手塚一志著

このように『慣性力』により生じた動作のギャップを『イナーシャル・ギャップ』と言います。

そして、ピッチング動作、バッテイング動作では、複雑な動作が一瞬で同時に行われ『慣性力』が大きく生じることで、「理想の動作と現実の動作のギャップ」は生じるのは当然だということを前提として、指導者も選手も共通して認識しおくことが重要です。

この言葉が野球界に広まったのは約20年前

バッティングの正体」著:手塚一志の中で記されていて、私もその書籍ではじめて知りました。

より詳しい内容を知りたい方は、書籍をご拝見して頂ければと思います。

フォームの誤差縮減!『イナーシャル・リダクション』

次にイナーシャルギャップの誤差を縮減させることを「イナーシャル・リダクション」と言います。

Reductionとは「縮減させる」という意味です。

イナーシャル・ギャップで起こる動作を予め想定して、実際の動作をオーバーに実践することで、理想の動作に近づける手法という理解で充分だと思います。

少し難しくなりましたが、何気に少年野球の指導でも頻繁に使われています!

例えば、バットどうしても上から叩きつけてスイングする選手に対しては「思いっ切りアッパースイングをしてみよう」といったアドバイスです。

理想のバット軌道、動作に近づけるために本当はしてほしくないような良いイメージとは真逆のスイングを意識させ動作してもらい理想に近づける手法です。

この手法は本当に効果的で実感している指導者の方も多いと思います。

選手たちにより効果を発揮できるように、アドバイスの内容、伝えるタイミング、様々な角度からのフォームチェックなど、日頃から情報収集や学んでおくことが必要です。

また「イナーシャル・リダクション」を用いるときに注意すべき点があります。

プロ野球選手などのパワーがある選手の動作と、筋力もまだ少ない少年野球の選手たちのゆっくりとした動作では、動作スピードや出力の大きさが違うため慣性力のパワーにも大きな差が出ます。

王貞治選手や松井秀喜選手など、プロ野球選手が実際の打席では絶対にしない、大根切りのような素振りをしているのは「下半身のパワーで身体を鋭く回転させる時に生じるパワーによって、バットヘッドが身体から引き離される慣性力をコントロールするための方法です。

これを、小学生のバッターに真似をさせてしまうと、体の回転運動がなくなり、非力な腕力だけでボールを上から叩いてしまうようなフォームなりがちです!

憧れのプロ野球選手の真似を導入する際は、肉体的、体力的な側面を見落とさないよう特に指導者は注意してください。

まとめ

今回の記事を参考にしていただき、1人でも多くの選手を「理想のフォーム」「理想の結果」に近づけるための方法を記事にさせていただきました。

今回の記事が少しでも野球指導のレベルアップに繋がれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。