「下半身が大事」という野球指導の現場
ピッチングやバッティングなどの動作指導するときに、よく使われる言葉ですね。

「下半身」とはザックリとした表現ですが、小学生でも何となく”そこは重要”なことだと理解していると思います。

「下半身」は腰から下の部分です。
動作感覚を指導するほとんどのケースで下半身が大事」というような言葉だけでは説明不足と言えます。

たとえ同じ動作でも、「動作感覚」表現する言葉には必ず個人差が出ます。
「感覚」を一致させるだけでも難しいことですが、ピッチングやバッティング動作になるとさらに難易度も高くなりますね

記述した通り動作感覚を一致させることは本当に難しいことになりますが、指導するうえで根気強く伝えていくことは、選手との重要なコミュニケーションになります。

そして、うまくいけば絶大な信頼関係にも繋がります。

下半身が大事=股関節が大事

動作感覚を言葉やジェスチャーで伝えることは難しいことですが、その精度を最低限、伝わるようにする考え方として、股関節に関する知識理解をより深めることが重要なポインになります。

股関節や周辺の構造からもわかるとおり下半身の動作は股関節支配しています。


下半身が大事股関節が大事であると言えます。

その股関節に関する知識をより理解することで、指導する側もされる側も感覚のズレを最小限におさえることに繋がります。

股関節とは?

股関節は人間がもつ1番大きな関節「骨盤」「大腿骨」を繋ぐ部分です。

出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021

人間が身体を動かすとき、筋肉の働きとともに関節が必要になります。
関節の数は成人で230~360個ほどあると言われています。

同じ人間でも細かい関節をカウントするかしないかで、差が出ます。

身体の中心に位置する「骨盤」
人間の1番長い骨「大腿骨」

そんな「関節」と「骨」の周辺には、たくさんの靭帯や筋肉が付いています。

シンプルに股関節やその周辺の筋肉しっかり可動させることができれば大きなパワーを生み出し「スピードボール」や「打球を遠くに飛ばす」ことができる可能性は高まります。

関節と動作

骨と骨を靭帯でつながれている器官を関節と呼びます。

つなぎ役の靭帯があることで、関節が外れることがなく固定されています。

出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021

そして、あらゆる方向に骨や筋肉を安定させ自由に動かすことができるのは、股関節周辺にたくさん関節や靭帯があるからです。

その筋肉と骨の結合に欠かせない役割を持っているのが靭帯や腱などの結合組織になります。

人間の「動作」は筋肉や骨と一緒に、靭帯や腱、軟骨などの結合組織が複雑かつ巧妙に働くことで実現しています。

関節身体を動かす”要”になります。
しっかり動かせることが出来れば、強くしなやかな身体動作を手に入れることができます。

そして、末端にある関節から中心にある関節がすべてスムーズに動くことで靭やかでしなやかな動作ができるようになっています。

骨盤とは?

骨盤は、大腿骨と脊柱の間で体を支える解剖学的名称になります。

左右1対の寛骨、仙骨、尾骨で構成されています。
この各骨はどれも成長とともに「癒合」(ゆごう)するので個数が変化します。

出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021

<寛骨>
腸骨、坐骨、恥骨が17歳頃に一体化して1個の寛骨になります。

<仙骨>
5個の仙椎が癒合して1個の仙骨になります。
*椎骨は腰椎と尾椎との間にある5個の骨になります。

<尾骨>
3〜6個の尾椎が部分的にあるいは全面的に癒合して尾骨になります。
数は個々人で違ってくるようです。

<股関節との接続>
坐骨・腸骨・恥骨の結合部が大腿骨と接続して股関節となります。
この受け部分を臼蓋と呼ばれ、股関節は肩関節と同じく球関節になります!

骨盤各部位融合していく構造なので、骨盤を割って動かせると言う達人もいます。

実際に動くと言っても、数ミリ程度と言われているので、鋭い動作感覚がないと感じることができないはずです。

イチロー選手レベルになると独特の動作感覚はもたれていそうですね。

大腿骨とは?

人の大腿骨の平均的な長さは43.2cmで、野球のホームベースの横幅と同じになります。

出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021

大腿骨人体において最長の骨といわれています。

<股関節との接続>
丸い大腿骨頭は寛骨とともに股関節を形成しています。
大腿骨頭はなめらかで、大腿骨頭窩というくぼみがあり、そこの靭帯が寛骨臼につながっています。

寛骨臼が骨頭の約4/5を包み込んでいることで、関節を安定させています。

<重要な機能>
大腿骨頭は骨髄で赤血球の生産がされています。
赤血球は血液細胞の一つで色は赤く血液循環によって体中を回り、肺から得た酸素を取り込みます。

また、体のいたるところに細胞を運び供給する役割と二酸化炭素の排出も同時に行っている重要なところです。

股関節の動きをよくすることは、動作パフォーマンスを向上させることだけではなく、疲労回復にも大きな役割をもっています

【重要】股関節の位置

股関節の位置正確に理解することで、動作指導するときの感覚のズレも最小限に抑えられると考えています。

まずは骨盤の両端を指で抑えて確認してみてください!
その抑えている指を骨盤の淵から下にずらしていくと、大腿骨の出っ張りにたどり着きます!

そこからやや斜め上にあたる、パンツの股のラインの真ん中あたりの中に股関節があります!

体の中にあるので直接触れることはできません!

子どもに股関節の位置を確認すると、何の違和感もなく脚の内側の筋肉や恥骨を押さえる人もよく見ます!

下半身の動作において重要な股関節をしっかり認識することは指導する側、される側において基本となります。

成長が止まると骨盤の大きさにほとんど変化はありません。

人により位置や大きさが変わることのない骨盤や大腿骨を理解して股関節の位置を知ることで、指導の現場でもお互いの感覚差を可能な限り抑えることにつながります。

 

 

イチロー選手や山本由伸投手のしなやかな股関節

イチロー選手のトレーニングをする姿を見たことがある人も多いと思います。
その中でも「初動負荷トレーニング」は有名ですね。

初動負荷トレーニングを黙々とこなしている姿を見て「股関節の可動域がすごい!」と衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか?!

SNSの普及でメジャーリーガーや日本のプロ野球選手のトレーニングを気軽に見ることができる時代です。

最近ではオリックス・バファローズに所属し日本代表にも選ばれている山本由伸投手のブリッジトレーニングなどが有名です。

https://www.youtube.com/watch?v=yRR5r2v_U9A
山本由伸: 150キロ中盤の豪速球の秘密①/鎌田一生のベースボール&トレーニングTV

チームメイトの吉田正尚選手も初動負荷トレーニングをしていましたが、股関節をすごくしなやかに動かしていました!

一流アスリートは、身体が大きく筋肉量もたくさんあります。
併せて股関節や肩甲骨の可動域も保っているので、しなやかな動きをつくりだせています。

スーパースターと一般人の股関節の違い

バスケ界 /マイケル・ジョーダン選手
ゴルフ界 /タイガー・ウッズ選手
野球界 /イチロー選手、大谷翔平選手

スーパースターも一般人も、みんな身体の構造、骨格に大きな差はありません

骨に付いている腱や筋肉が違います

イチロー選手や大谷選手は
試合前の準備運動の動作だけでも股関節に柔軟性があり筋肉がしなやかであることが分かります。

アスリートの多くは、子どもの頃から練習やトレーニングをして筋肉や関節をたくさん動かし続けてきています。

筋肉量は一般人よりも多く、弾力性もあります。

股関節周辺には22の筋肉があり、関節があります
各方向に自在に動きますが、1つでも硬化していたり機能が低下していると全体の動きが悪くなります

つまり、アスリートの体はバランス良く股関節周辺の筋肉が機能しているということです。

アスリートが股関節を痛めてしまう話を聞いたことがあると思います。
引退を決断した西武ライオンズの松坂大輔選手も過去に股関節の手術をしていましたね。

それはトレーニングや試合で酷使した結果です。

筋肉や関節が限界を超えバランスを崩して起きてしまうことなのですが、ケガをしないギリギリまで可動させることがパフォーマンスの発揮に不可欠になるからです。

股関節の動きはスポーツ以外でも重要

少し話は外れますが、茶道など礼儀作法が重んじられている習い事をされたことはありますか?

若い世代はとくに、馴染みが無い人も多いと思いますが、茶道はどのシーンにおいても正しい姿勢ですることがルールになります。

日本という国で古くから伝わる文化には、必ず「礼儀作法」があります。
礼儀作法には、股関節を正しく働かせることが求められます。

例えば正座をするとき、「踵の上に骨盤の坐骨がを乗せる」のがルールです。

そうすることで、骨盤は必ず前傾します。
腰椎の前方カーブが少しきつくなり、腰は軽く反った状態になります。

その姿勢をキープし体幹部分を安定させて、股関節から上体を前に倒すのが、美しいお辞儀とされています。

同じように、日本舞踊や狂言や能といった古典芸能でも股関節の動きは重要視されています。

このような習い事をされている人たちは、日常から正しい姿勢をキープすることを大切にしています。

プロ野球選手やその他スポーツでもアスリートに姿勢が悪い人はなかなか見かけることがありませんね!

最も意識しにくい関節が「股関節」

身体の中心にある「骨盤」
人間の1番長い骨「大腿骨」

それぞれをつな人体最大の関節が股間節ですが、その周辺に筋肉がたくさんあり、分厚い組織に囲まれ、身体の深部に位置しています。

直接見ることも触れることも難しいので、非常に意識しにくいところです。

最も大きくて強力なパワーを生み出す関節にも関わらず、繊細な動きを感じにくい動かしにくいというところが、「意識しにくい」要素だと思われます。

出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2021

最後に

股関節に関する知識はまだまだたくさんあるのでより知識を深めたい人は、この機会に専門書などを読んでみてください。

今回の記事だけでも理解しておくと、股関節をより使いこなしてピッチング、バッティングがレベルアップするキッカケになるはずです。

下半身をしっかり使う=股関節をしっかり使いこなせるようには、時間がかかりますが、変化を実感できるようになった日には、ピッチングやバッティングのレベルは格段にアップしているはずです。

「指導」の前提条件は、指導者はもちろん指導してもらう選手も最低限の知識をもって指導してもらうことによりレベルアップが図りやすくなるものだと考えています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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