基本的に、中学生以上のピッチャーであれば変化球を使いながら配球を組み立てて打者を打ち取っていくと思います。
緩球、落差、横にスライドする変化、ストレートとあまり変わらない速さと軌道から手元で変化する速球に近い変化球。
状況や場面に応じて上手く使い分けることで、ゴロを打たせたい場面でゴロを打たせられたり見逃しやファールを打たせてストライクカウントを稼いだり、空振りを取ることができます。
良いピッチャーになるために欠かせない変化球。
その主要な変化球の種類と特徴を解説していきます!
尚、変化の方向は右ピッチャーを基準に説明しておりますので左ピッチャーは逆方向と考えてお読みください。
【 目次 】
1,カーブ
カーブは世界で初めて投げられた”最古の変化球”だそうです。
カーブは今でも最もポピュラーな変化球として多くの投手に使われていて、変化球を覚えるときに一番初めにカーブを覚えたという投手の方も多いのではないかと思います。
しかし、カーブは思ったよりも”奥が深い変化球”でもあります。
奥が深い”カーブ”という変化球
『ピッチング デザイン』の著者、お股ニキさんは著書の中で「カーブはある意味、誰でも投げられる変化球だが、その扱いは極めて難しく、誰でも使えるわけではない。」(お股,2020年,p.106)と述べています。
特にレベルが高くなるにつれて「ただ投げられるだけ」の中途半端なカーブは狙われて簡単にヒットにされたり、狙っていなくても対応されてしまいます。
レベルによってはキレのあるカーブが投げられなかったとしてもただタイミングを外す、目線を外す、打ち気を削ぐという効果も期待できるので、ストレートとの緩球の駆け引きや心理的な駆け引きにもカーブは有効に使用できる場合もあります。
極端にスピードを落としたスローカーブや、回転の強くかかったナックルカーブなど手の大きさや投げ方などにより人によって変化の仕方が大きく違うことも特徴です。
2,スライダー
MLBでは年々スライダーの投球割合が上がってきているそうです。
2010年には12.8%だったのが2019年には18.6%にまで上がっていて(お股,2020年,p.81)、アマチュアからMLBまで幅広いレベルの投手がスライダーを多く使っているようです。
一括にスライダーといっても種類があり、横に曲がる一般的なスライダーと縦に落ちるように曲がる「縦スライダー」、最近では「スラッター」や「スラーブ」などといった種類のスライダーもできました。
スライダーとカーブの違いを出すコツ
スライダーを投げるときにカーブに近い変化になってしまう投手もいると思います。
そういう投手はスライダーを投げるときに上向きに投げてしまっている可能性があります。
速いスライダーを投げるためにはいかに斜め下向きの角度で回転をかけながらボールを離すことができるかが重要です。
最初は叩きつけてしまってもいいので引っ掛けるように回転をかけながら投げることを意識してみてください。
●がボールの中心。
→方向にリリースしてしまうとカーブに近い軌道になりやすい。
→方向にリリースできればストレートの軌道に近い球速のあるスライダーになりやすい。
投球に悪影響を与えやすい変化球
一方で、スライダーは投げすぎると肩や肘の故障に繋がりやすいボールでもある。ということを覚えていてください。
回転をかけようとして手首を捻るような投球動作をするとより肩や肘に負担がかかりやすくなります。
また、スライダーを投げすぎることによりストレートの回転軸などに悪影響がでてしまうケースもあります。
スライダーを連続で投げる練習をすることは避けて、2~3球に一度はストレート挟んで調整しながら練習しましょう。
3,チェンジアップ
チェンジアップはスライダーなどとは違い、肩や肘への負担が少ない変化球です。
そのためまだ身体の出来上がっていない中学生投手の方に特におすすめの変化球です。
握り方を工夫することで手の小さい投手でも比較的投げやすい変化球でもあります。
チェンジアップの握り方をこちらの動画でご紹介しているのでぜひ御覧ください!
チェンジアップの有効的な使い方
比較的ストレートに近い腕の振りから投げることができるのでバッターと対戦する際にもかなり有効に使うことができる変化球です。
低めは有効的ですが、高めに浮いてしまったり、上手く抜くことができずに棒球になってしまうと長打になりやすいので慎重に低めにコントロールしましょう。
腕の振りも弱めずにストレートと同じくらいの強さで振ることができれば打者のタイミングを外すことができます。
4,フォークボール
フォークボールの基本的な握り方は人差し指と中指で挟んで持ちます。
そのため、手が大きく、握力の強い投手がフォークボールを扱っていることが多いです。
その持ち方が食事の際に使用する「フォーク」のようにみえるためフォークボールと呼ばれているそうです。
福岡ソフトバンクホークスの千賀投手のフォークは「お化けフォーク」と呼ばれるほど落差のあるフォークを投げます。
質の高いフォークは空振りを取りやすく、配球の中でもウイニングショットとして使うことができます。
落ちるボールを意識させることでストレートで打ち取ることができる確率も上がります。
5,シュート
シュート系の回転のボールは右投手であれば、右バッターのインコースに投げて芯を外し詰まった打球を打たせることができます。
金属バットの場合は芯を外してもポテンヒットや内野の間を抜けるヒットになる可能性もありますが、木製バットの場合は芯を外す、特に詰まらせるような打球は凡フライやボテボテのゴロになりやすいので、シュート系の回転のボールは木製バットのほうが有効的に使えます。
また、詰まっても力で打球を持っていける打者にはあまり有効ではないですが、力がない打者には有効的に使うことができます。
シュート回転系のボール,ツーシーム
横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手や福岡ソフトバンクホークスの東浜巨投手ら亜細亜大学野球部出身投手が投げているフォークボールのように縦に大きく変化する特殊なツーシームは「亜大ツーシーム」と呼ばれています。
一般的なツーシームはストレートに近い球速で少し沈み、シュート回転で少し内側に入ってくるような軌道のボールです。
近年はフライボール革命などの影響ですくい上げるようにしてバットを出す打者が増えてきています。
そのためストレートとそんなに変わらない速さで少し沈む変化をするツーシームはミートされやすくなっていると言われています。
たまに配球に組み込むと有効的ですが、あまり多投しすぎないほうが良い球種になります。
6,カットボール
カットボールも速球の変化球です。
MLB投手の投げる良いカットボールは右に少し曲がりながら浮き上がります。
左投手の投げるシュートのような軌道です。
そのため、左打者のインコースに投げることで差し込まれ、詰まった打球になりやすいです。
沈むカットボールを投げる投手もいますが、その場合はやはり詰まっても力のあるバッターや金属バットの場合はポテンヒット、最悪の場合はホームランになってしまう可能性もあるので注意が必要です。
少し工夫することで、スピードの変化、回転のかかり方、曲がり方が変わるのでより有効的なカットボールを練習の中で投げられるようになると良いです。
最後に
今回は変化球の種類と特徴を解説しました。
ただ投げられる変化球を増やしていくだけでなく、一つの変化球の質を上げてウイニングショットを作ることも大切です。
また、いくら変化球が良くてもストレートのキレが良くなければ変化球も生きてきません。
ストレートを活かすための変化球。変化球を活かすためのストレート。
配球を組み立てる上ではどちらも大切です。
キレのあるストレートのポイントはこちらのブログで解説していますので合わせてお読みください。
【投手必見】圧倒的に誤解されている「初速と終速の差」とキレのあるストレートの絶対に知っておくべきポイント!
最後までお読みいただきありがとうございました。
お股ニキ(2020年)『ピッチングデザイン 2020年を勝ちぬく一流投手の条件』、株式会社 集英社
浜田典宏(2020年)『投手の実践テクニック』、株式会社ベースボールマガジン社